小型バイク 原付バイク における レギュレーターレクチファイアの考察

日常の足で90年初期の原付ヤマハジョグに乗っています。
先日、メーターライト、テールライト、ヘッドライトと次々に切れました。
レギュレーターレクチファイアの経年劣化による故障です。
そこで修理にあたって今はどんなふうになっているのかな?で勉強させてもらった結果をメモとして残します。


先ずは歴史
大きく分けて以下の3タイプ

80年代法律が変わってヘッドライトは常時点灯となりました。
これ以前の原付バイクの多くはレギュレーターを装備していません。整流用のダイオードは装備しています。
6V 単相半波整流 が主流です。12V も出てきてました。
電装系の壊れ方は、バッテリーが補液してなかったり寿命等で機能しなくなっているけどキックでエンジンはかかるので、
気にせず乗りまわしているとアクセルをあおった拍子にランプ類が切れてしまう。
バッテリーも過充電上等の設計なので開放型しか搭載できません。
ライトスイッチをOFFにするとバッテリーの過充電防止のため抵抗器につながります。

90年ごろ
大バイクブームに乗って原付スクーターも進化します。
12V 単相半波整流 が主流です。 一本のコイルから二系統の出力を取り出すのが特徴です。
レギュレーターレクチファイアを装備します。
電装系の壊れ方は、スターターセルモーターが回らない系の充電しない。高回転時に球切れする。
要するにレギュレーターレクチファイアの故障となってきます。

00年代以降
12V 単相全波整流 が主流です。
EFIやらで電気が足らなくなってきたのと半導体製品の低価格化にともない原付バイクもとうとう全波整流となりました。
電装品が直流化されました。HIDやらLEDやらなんでもござれ。
ただし、レギュレーターレクチファイアが壊れると被害甚大。
バッテリー次第でエンジンさえかからなくなります。


カスタマイズの歴史
00年代 既に旧車になりつつあった6Vの原付のヘッドライトが暗すぎるが始まりだった気がします。
電圧や電流値を上げるため全波整流化する人々が出てきます。
素人ができるのに何でメーカーは最初からしなかったのか?
発売当時半導体素子はまだ高価だったのでコストパフォーマンスが悪くなってしまうのを嫌っていたからです。
元々は装備されていなかったレギュレーターレクチファイアを装備させます。
ジェネレーターの配線をはじめ電装系の配線を変更します。
既に原付スクーターが進化したおかげで部品は提供されていましたし、配線の概念も完成していたのでやる気があればという状況でした。

同年代 12V系の90年代原付もHIDやLEDに憧れ直流化、全波整流化がはじまります。
6V系の理論と12V系の理論がごちゃ混ぜになり、経験と結果がすべての人が条件無視でのたまったので、今でもトラブルの基になっています。


レギュレーターレクチファイアについて
原付ごときに何のために装備されたのか?
繰り返しますが常時点灯化規制前の80年代までは原付には装備されていませんでした。
高価だったので使いたくありません。発電量と消費量とバッテリーの設計で何とかなっていました。
スクーターが主力になり、おばちゃんがターゲット。メンテナンスフリー、スターターや明るいヘッドランプが売りとなります。
新設計も馬鹿らしいので大型バイクのおさがり設計となります。
電装系といっても灯火系ヘッドライト、テールライト、メーターライト、オートチョークの交流系とホーン、ウインカー、ストップランプ、スターターの直流系。独立の点火系という設計が主流でした。
一本のコイルから2本の交流を取り出します。
灯火系の交流はコイルの途中から分岐して取り出しています。コイルの全長が短いため電圧は低くなっています。
ジョグの場合、最大18Vくらいの交流が取り出せます。灯火系の交流は3~4V落ちの15Vくらいです。
これではバッテリーに充電できません。レギュレーターレクチファイアの出番です。
レギュレーター能力で電圧を制御、バッテリーの能力を勘案し14.5Vくらいでカットします。更にレクチファイア能力で正電圧部分だけをバッテリーに流します。
更にバッテリーの電圧も見ていますので過充電も無く安全です。
さて、設計段階で最大14,5Vになるようにコイル長を設定すればレギュレーターレクチファイアなんていらないんじゃないの?
アイドルもしくは30㎞/hでの走行では発電量がとても足りません。充電不足確実です。
ジョグの場合、アイドルでは11Vくらいしか発電しません。
全波整流にすればそれも解消でしょう?
正解の一つです。多分足らないけど。
当時のコストパフォーマンスの問題で落ち着いたのが、12V単相半波整流です。


全波整流と半波整流 メリット デメリット
発電量を多くする事が主目的でレギュレーターレクチファイアのコストを無視するならば全波整流が圧倒的に有利です。
最近では全波整流が主流になったおかげでAmazonさんや中華製などの汎用品は全波整流タイプの方が安価なくらいです。
カスタマイズする時に点火系がどうなっているのかは重要です。ミスると高くつきます。
タダで電力は作れません。その分走行に回せるエネルギーは減ります。 燃費は悪くなります。


都市伝説 1
全波整流化で一番話題になっているようなのが、高回転時の高電圧部分の電力はどこに行ってしまうのか?
レギュレーターレクチファイアのヒートシンクで熱になって捨てられてしまうんだよ。 これ不正解です。
結論、カットされて発電されていないのでどこにも行かないしどこにも行けない。
原付に使われるような低電力用のレギュレーターレクチファイアの制御方法です。
設定値だいたい14,5Vになるとコイルをショートさせてしまいます。ただし見ているのは灯火系の出力です。

負荷がほぼ無いのと同じなのだから電力は発電されません。
これを半導体素子を利用して超高速で切ったり繋いだりしています。
出てくる波形は台形のような上辺はギザギザの直線です。
電流値はインピーダンスの関係で先に飽和してしまっています。
じゃあヒートシンクが熱々になるのはどうして?
半導体素子としてサイリスタ、パワートランジスタが使われることが多いのですが、抵抗値がゼロではないので電流が流れるとどうしても発熱します。
この分を排熱しないと壊れます。PCのCPUはトランジスタの塊です。発熱は問題なのです。

 

都市伝説 2
配線の変更について
目的と結果の混同によるものと思われるのが、何故全部直流化しないといけないか?です。
LED化するために全波整流化しなくちゃいけないという人がいます。
LEDの多くの商品は直流を求めていますのでバッテリーから電線を引っ張ってくることになります。
先に記したのですが、90年代の原付の多くの灯火系は交流のままですから配線の変更が必要です。
ここまでは仕方がない。さて、直流化するのになんで全波整流?
そう、都市伝説です。直流化だけが目的なら必要ありません。
全波整流化の主目的は電力を少しでも多く取り出すことです。
どうせいじくるのならいい機会だ全波整流化しちゃえ! これはアリです。
正解は全波整流化したので灯火系を直流化しないとやばいです。
なぜ?
全波整流化すると灯火系の電力が理論上(実際は無理)倍になります。
コイルの取り出しポイントを変えるとか抵抗を入れるとか他にも方法はありますが通常直流化します。
直流化=LED化の混同です。
LEDもHIDも低消費電力とのうたい文句で販売されているようですが現実は逆なようです。そのため電力量を増やさざる得なく結果全波整流化が必須となっているのが現状です。

 

以上、意見です。間違い勘違い当然あります。